慢性下痢

慢性下痢 chronic diarrhea


【定義】
 下痢とは腸管からの水分吸収が減少し、便の水分含量が高い超機能の変化を表す。4週間以上持続する下痢を慢性下痢とする。

【分類】
1. 水様性下痢
 水様性下痢は、便の電解質濃度を分析し、便の浸透圧ギャップを計算することにより、分泌性下痢と浸透圧性下痢とに分類できる。

  分泌性慢性下痢 浸透圧性慢性下痢
便の浸透圧 便中Na > 90 mmol/L
浸透圧Gap > 50 mOsm/kg
便中Na < 60 mmol/L
浸透圧Gap < 100 mOsm/kg
便の性状 大量の水様便 泥状・大量でない
排便回数増加 あり 必ずしもなし
夜間覚醒 あり なし
絶食での改善 なし あり
電解質変化 あり  なし

*浸透圧ギャップ = 290 – 2 x (便中ナトリウム + 便中カリウム)

 分泌性慢性下痢は、特に消化管内分泌腫瘍に関連する場合が多い。
 浸透圧性慢性下痢は薬剤に関連することが多い。
 炭水化物は腸内細菌による発酵を受けて短鎖脂肪酸に変換される。短鎖脂肪酸は大腸粘膜に吸収されないか、あるいは重炭酸塩によって緩衝されないかぎり、浸透活性および糞便pHに影響を及ぼす。そのため、炭水化物の吸収不良の場合、炭水化物の短鎖脂肪酸への発酵により、便のpHは6未満となる。

2. 吸収不良性慢性下痢
 便中に過剰に脂肪が存在する。
 原因として、膵外分泌機能不全、小腸内細菌過剰増殖症(small intestinal bacterial overgrow : SIBO)、セリアック病などの小腸粘膜疾患や、慢性膵炎などがある。

 72時間蓄便中の脂肪の定量評価(1日100gを含む食事3日間)で正常であればセリアック病を疑う。
 脂肪が上昇し、便中中性脂肪陽性、ガストリン値正常なら慢性膵炎を疑い、慢性膵炎の所見がなければ小腸内細菌過剰増殖症を疑う。

3. 炎症性慢性下痢
 炎症性腸疾患、アメーバ症または結核などの慢性感染症、悪性疾患、虚血または放射線性腸炎などが原因となる。
 腹部CT、MRI、内視鏡検査が必要。
・水様性下痢:蛋白漏出性胃腸炎、好酸球性腸症、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎など
・血性下痢:潰瘍性大腸炎
・水様性または血性:クローン病、感染性腸炎


【参考】
・慢性下痢ー鑑別すべき疾患と対策:仲瀬裕志:日医雑誌 Vol.147 No.10 2019