急性喉頭蓋炎

急性喉頭蓋炎 acute epiglottitis


【概念】
 急性喉頭蓋炎は、喉頭蓋に生じた急性炎症性疾患であり、起炎菌としてはインフルエンザ菌b型(Hib)が最も多い。
 我が国においては2008年12月よりHibワクチンの任意接種が始まり、2013年4月からは定期接種となったため、その発生は激減している。

【病態】
 細菌感染により喉頭粘膜下に蜂窩織炎が起こった状態。
 喉頭蓋の中心には喉頭蓋軟骨があり、これを粘膜上皮が覆っている。両者の間は結合組織によって疎に継っているだけで、ここに化膿性の炎症が生じると蜂窩織炎になり、浮腫性の腫脹をきたす。炎症は喉頭全体や周辺組織に及ぶこともある。

【症状】
・好発年齢:5歳未満
・初発症状:感冒症状に続発し、急激に発熱、咽頭痛が生じる。
・主症状:発熱、咽頭痛とそれに伴う流涎、含み声、吸気性喘鳴、陥没呼吸、チアノーゼなど。
 嚥下痛、嚥下困難、嗄声、吸気性喘鳴、呼吸困難などが特徴。
・転帰:気道閉塞にて死亡することがあり、死亡率は1.4%。

【喉頭浮腫】
 喉頭蓋軟骨と粘膜上皮の間の疎な結合組織に炎症が生じ、蜂窩織炎となり、浮腫性の腫脹をきたした状態。
 頸部リンパ節炎や咽頭外傷などの炎症が波及することで喉頭蓋や披裂部の粘膜が腫脹し、喉頭全体が狭窄する。

【検査】
・頸部単純X線検査:側面像で喉頭蓋の腫脹(thumb print sign)
・間接喉頭鏡/喉頭内視鏡:気管挿管などの気道確保の準備がなされている環境下で行うのが望ましい。

【治療】
・気管挿管による気道確保
・マスク換気:頭部後屈やオトガイ先挙上の体位で
・輪状甲状靭帯の切開(トラヘルパーは禁忌)
・人工呼吸管理
・抗生剤投与
・ステロイド剤の全身投与および吸入:粘膜浮腫軽減目的


【参考】
・奥羽譲、守本倫子「ほとんどみられなくなった急性喉頭蓋炎も忘れずに」小児内科 Vol.51 No.2 2019-2