呼吸器の症候

呼吸器の症候


1. くしゃみ sneezing
 鼻粘膜の機械的・化学的刺激によって、爆発的な呼気を引き起こす反射。
 鼻汁の分泌をともうなう。

2. いびき snoring
 睡眠中に軟口蓋、咽頭後壁、口蓋垂などの上気道軟部組織が振動することによって生じる異常音。
 睡眠時無呼吸症候群をともなうことが多い。

3. 嗄声(させい) hoarseness
 声帯の異常や反回神経麻痺により生じる声の音質の異常。

4. 喘鳴 wheezing, stridor
 狭窄した気道を空気が通り抜けることによって生じる雑音。
 上気道狭窄によるものを stridor、過気道狭窄によるものを wheezingという。

・stridor:吸気時に強い。クループ、上気道異物、急性喉頭蓋炎などによる。
・wheezing:吸気時に強い。気管支喘息、細気管支炎、COPD、DPBなどによる。
 吸気時は上気道(胸腔外)の内圧が低くなるため、上気道内腔が狭窄しやすい。胸腔内の陰圧は強くなるため、下気道は狭窄しにくい。
 呼気時は胸腔内の陰圧が弱くなるため、下気道の内腔が狭窄しやすい。上気道の内圧は高くなるため、吸気時よりも狭窄しにくい。

5. 咳嗽 coughing
 気道内の分泌物や異物を除去するために肺胞内の空気が気道を通して爆発的に有声駆出すること。

・咳は声門部での気流速度が100m/sec以上になる。
・生理的な防御反射で、咳反射の求心路は気道などに分布する迷走神経、遠心路は肋間神経、横隔神経、反回神経などが関与する。
・発症後3週間以内のものを急性咳嗽、3週以上持続するものを遷延性咳嗽、8週以上持続するものを慢性咳嗽という。
・乾性咳嗽:痰を伴わない。胸膜・間質病変・気道病変などに多い。
・湿性咳嗽:痰を伴ともなう。気道病変に多い。

6. 喀痰 sputum
 気道粘膜からの分泌物であり、細菌、ウイルス、アレルゲン、塵埃、その他各種の細胞が混じっている。
・1日喀痰量が100ml以上の場合、次の3つを考える。
 ①びまん性汎細気管支炎(DLB) ②気管支拡張症 ③粘液性腺癌

7. 血痰 hemosputum
 気道由来の出血で、一般に咳嗽とともに排泄される。
 口腔、鼻腔、咽頭腔などからの出血が胃に入り、吐血様となることもある。
・喀血の90%は気管支動脈系に由来する。

8. 呼吸リズムの異常
 正常呼吸は規則正しく、呼吸数12〜20回/分である。
・頻呼吸 tachycardia:呼吸数増加(25回/分以上)、呼吸深度に変化なし。
・徐呼吸 bradycardia:呼吸数減少(12回/分以下)、呼吸深度に変化なし。
・多呼吸 polypnea:呼吸数も呼吸深度も増加。
・過呼吸 hyperpnea:呼吸数は正常で、呼吸深度が増加。
・減呼吸 hypopnea:呼吸数は正常で、呼吸深度が減少。
・無呼吸 apnea:安静呼気位で、呼吸が一時的に停止した状態。
・Kussmaul 呼吸:代謝性過換気。深く大きな呼吸。
・Cheyne-Stokes呼吸:低換気と過換気を周期的に繰り返す。
・Biot 呼吸:無呼吸と頻呼吸が秩序に繰り返される(失調性呼吸)。

9. 呼吸困難 dyspnea・息切れ breathlessness
 呼吸運動に際して不快感、苦痛を自覚する状態。
・呼吸困難と息切れは臨床的に同義語と考えてよい。
・呼吸困難を引き起こす受容体は単一ではない。
・呼吸の不足感・不快感は換気増大を、呼吸の努力感は換気抑制を促し、全体として呼吸困難を最小にしようとする調節が働いている。
・起坐呼吸:呼吸困難が臥位で増強し、起坐位で軽減するもの。
・片側臥位呼吸:患側を下にすると呼吸困難が軽減する。

10、ばち指 clubbed finger・チアノーゼ cyanosis
 血中の還元Hbや異常Hbの増加により、皮膚・粘膜が暗紫色を呈する状態。
 還元Hbが5g/dl以上になるとチアノーゼを呈する。
 ばち指とチアノーゼの両方がある場合、心・肺疾患。
 ばち指はあるがチアノーゼはない場合、肝・消化器疾患。

11. 胸水 pleural effusion
 胸膜腔に生理的な範囲を超えて液体が貯留した状態。
 胸腔内には通常約5mlの液体が存在し、胸間膜の摩擦を和らげ、呼吸を円滑にしている。液体は壁側胸膜より5〜10L/日産生され、大部分は同じ壁側胸膜のリンパ管に吸収される。胸水の産生過剰または吸収障害などにより病的な貯留が生じる。
 大量の胸水貯留があると呼吸障害、チアノーゼや頻脈が生じる。

・漏出性胸水:全身性の原因によるもの
 静水圧上昇(うっ血)、血漿膠質浸透圧低下(低蛋白血症)など
・滲出性胸水:局所性の原因によるもの
 毛細血管透過性亢進、リンパ液還流低下など

12. 胸痛 chest pain
 気管支および肺実質には知覚神経はないが、病変が胸膜・横隔膜・脊椎・肋骨・縦隔内蔵に及ぶと疼痛が起こる。