全身性エリテマトーデス(SLE)

全身性エリテマトーデス systemic lupus erythematosus : SLE


【概念】 
 遺伝的素因を背景に環境因子が誘引となって、抗核抗体などの自己抗体が産生され、免疫複合体を形成することによって起こる多臓器障害性の慢性炎症性疾患。著しく多彩な臓器病変を呈する。

【疫学】
・男女比1:9で女性に多い。
・好発年齢:15〜40歳
・有病率:人口10万あたり8〜10人

【病理】
<典型的初見>
・ヘマトキシリン体(特徴的)
・フィブリノイド壊死を伴う少動脈血管炎
<各臓器>
・ループス腎炎(50%に合併)

【臨床症状】
A.  全身症状:発熱、易感染性、体重減少
B.  皮膚・粘膜症状(90%以上に発症)
・顔面蝶形紅斑 butterfly rash
・円板状皮疹 discoid lupus rash
・非特異的紅斑:爪周囲、手掌、足底の趾のつけ根
・脱毛
・光線過敏症、口腔・鼻咽頭の無痛性潰瘍
・レイノー現象
C.  関節症状(95%):ステロイドに反応
・多発性関節炎、関節痛
・関節変形(Jaccoud変形)
D.  腎症状(50%)
・ループス腎炎
・ネフローゼ症候群
・陽性荷電IgG抗体ds−DNA抗体が関与
・腎生検蛍光抗体法でIgG、C3沈着
E.  神経症状(10〜20%)
・中枢神経ループス:精神症状(うつ状態、幻覚・妄想・せん妄)、知的機能障害、意識障害
・痙攣(15%)
・無菌性髄膜炎
・その他:脳神経麻痺、脳梗塞、ループス頭痛、横断性脊髄炎、視神経炎
・末梢神経症状:多発性単神経炎(頻度は少ない)
F.  心症状
・心膜炎、心筋炎、心筋梗塞、動脈炎、弁膜疾患
・Libman-Sacks型心内膜炎
G. 肺症状
・胸膜炎:胸水貯留、両側下肺野の板状無気肺合併
・間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症(いずれも稀)
H. その他の症状
・リンパ節腫脹
・ループス膀胱炎
・骨の無血管性壊死 avascular necrosis:大腿骨頭前上部に多い
・腸間膜動脈血管炎による麻痺性イレウス
・ループス腹膜炎

【誘引・増悪因子】
 紫外線暴露、感染、外傷・手術、妊娠・分娩、経口避妊薬、薬剤アレルギー

【臨床検査】
・血液検査:
 ・末梢血で3系統とも減少:特にTリンパ球、ときに血球貪食症候群合併
 ・Evans症候群:AIHI+ITP
 ・赤沈亢進、CRP弱陽性、α2−グロブリン増加、γ−グロブリン増加
 ・細胞性免疫低下、免疫複合体陽性
 ・血清補体価(C3、C4、CH50)が活動期に低下
 ・抗核抗体陽性(ほぼ100%):抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体
 ・抗リン脂質抗体症候群 antiphospholipid antibody syndrome
 ・LE細胞陽性(70〜80%)
 ・抗リボソーム抗体陽性(約10%)
 ・生物学的偽陽性 biological false positive : BFP
   ワッセルマン反応陽性、STS陽性
   TPHAテスト陰性、FTA-ABSテスト陰性
・尿検査:無症候性蛋白尿、血尿、尿沈渣異常
・眼底検査:眼底の綿花状白斑(軟性白斑)、火焔状出血
・脳波:基礎律動の徐波化
・脳脊髄液検査:IgG index上昇、IL-6上昇、INF-α上昇
・CT・MRI:大脳皮質・皮質下病変、大脳萎縮

【SLE分類基準 1998】
1. 頬部紅斑
2. 円板状紅斑
3. 光線過敏症
4. 口腔内潰瘍
5. 2関節以上の関節炎(非破壊性)
6. 漿膜炎(胸膜炎、心外膜炎)
7. 腎障害(持続性蛋白尿、細胞性円柱)
8. 神経症状(けいれん発作、精神症状)
9. 血清学的異常(溶血性貧血、白血球減少、リンパ球減少、血小板減少のいずれか)
10. 免疫学的異常(抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体:抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、血清梅毒反応生物学的偽陽性のいずれか)
11. 抗核抗体陽性
*以上11項目中4項目以上を満たす

【治療】
・一般療法:安静、疲労・睡眠不足・直射日光の回避
・薬物療法:NSAIDs、ステロイド療法(中心)
・その他:血漿交換、腎不全に対する血液透析、腎移植

【予後】
・5年生存率:90〜95%
・死因:第1位は感染症(約30〜35%)、次いで脳血管障害、心病変、自殺
  SLE固有病変では腎不全、中枢神経ループス、間質性肺炎の順