先天性QT延長症候群
【概念】
先天性QT延長症候群は、QT時間の延長と torsade de pointes (TdP) と呼ばれる多形性VTを認め、失神や突然死の原因となる症候群である。
頻度は2,000人に1人で、女性がやや多い。
【分類】
・Romano-Ward症候群:常染色体優性遺伝のもの。
遺伝子診断上、8つの染色体上に13個の遺伝子型が報告されており、LQT1とLQT2がそれぞれ40%、LTQ3が10%である。
・Jervell & Lange-Nielsen症候群:常染色体劣性遺伝で、両側性感音性難聴を伴うもの。
遺伝子診断上、2つの遺伝子型が報告されており、KCNQ1またはKCNE1のホモ接合体である。
【病態生理】
50〜75%の患者に、K+、Na+、Ca2+電流などのイオンチャンネルに関連する遺伝子変異がみられる。
心室筋活動電位プラトー相の外向きK+電位の減少、または内向きNa+、Ca2+電流の増加により、心室筋活動電位持続時間(ADP)が延長し、QT時間が延長する。
【臨床症状】
失神、心停止、突然死。
・LQT1は発作が運動中に起こりやすく、特に水泳中に多い。
・LQT2は情動ストレスや音刺激による覚醒時など、急激に交感神経が緊張する状態で発作が起こりやすい。
・LQT3は睡眠中や安静時に発作が起こりやすい。
・生涯心事故発生率はLQT1とLQT2が高いが、致死的なものはLQT3に多い。
【診断】
1)心電図所見:QT時間、TdP、交代性T波、ノッチT波、徐脈
2)臨床症状:失神発作、先天性聾
3)家族歴
より点数化し、3.5点以上
また、QTcが常に500msec以上
【治療】
遺伝子型特異的治療が行われる。
・LQT1では運動制限が必須。β遮断薬が有効。
・LQT2でも運動制限とβ遮断薬が有効。K製剤とK保持性利尿薬の併用による血清K値上昇も有効。
・LQT3ではメキシレチンが有効。ペースメーカー治療も有効。
・いずれの型でも心房細動または心停止既往例は植込み型除細動器(ICD)の絶対適応。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-02