クロストリジウム・ディフィシル感染症(偽膜性大腸炎)
【概念】
1978年に抗菌薬関連の偽膜性大腸炎の原因菌として、Clostridium difficileが報告された。
クロストリジウム・ディフィシルはG陽性の芽胞形成性偏性嫌気性菌で、トキシンを産生する菌株と産生しない菌株が存在する。
C. difficile感染症(C. difficile infection : CDI)は本菌の産生するトキシンA、トキシンBが重要で、通常病原性を発揮する C. difficileは両方の毒素を産生する。腸管内腔で産生されたトキシンは細胞傷害を引き起こすとともに、多数の炎症細胞遊走を惹起し、特徴的な偽膜形成を引き起こす。
CDI発症の危険因子としては、腸内細菌叢の撹乱、環境要因、宿主側要因の3つが重要で、特に抗菌薬の長期投与、高齢、制酸剤やステロイドの投与、炎症性腸疾患の存在などと関連が強い。
【臨床症状】
軽度の下痢から偽膜性大腸炎までさまざまで、無症候性の場合もあり、トキシックメガコロンにより致死的になることもある。
通常5〜10日間の抗菌薬投与後に下痢で発症することが多い。
下痢・腹痛に加えて発熱、白血球増加(15,000以上)もみられる。
腹部CTでは腸管壁の肥厚、腸管拡張、アコーディオンサイン(重症)がみられる。
内視鏡検査では大腸に白色偽膜が観察される。
しばしば再燃がみられる。
【診断】
以下の基準のうち①を満たし、さらに②もしくは③を満たした場合に診断される。
①1日3回以上の下痢の存在(軟便または水様便)
②便からのトキシン産生 C. difficileの検出、もしくは C. difficileの検出
③内視鏡あるいは病理組織による偽膜の証明
・便中トキシンの迅速検査法はイムノクロマトグラフィ法が一般的
・C. difficileが共通で保有するグルタミン酸脱水素酵素抗原(glutamate dehydrogenase:GDH)とトキシンBの両方を検出する迅速診断法が開発されている。
【治療】
・原因・リスクとなっている薬剤の投与中止
・軽症〜中等症にはメトロニダゾール経口投与
・重症や合併症がある場合はバンコマイシン経口投与またはメトロニダゾール系静脈投与
・難治症例には糞便注入法 fecal microbiota transplant:健常人の腸内細菌叢を移植
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-10