リステリア感染症
【概念】
リステリアは土壌や植物、動物の糞便に汚染された水など自然界に広く存在し、人畜共通感染症を引き起こす。垂直感染による流死産・胎児敗血症性肉芽腫症を呈する場合と、成人に髄膜炎や敗血症で発症する場合とがある。
【病原菌】
リステリア属菌には7菌種が存在するが、人に病原性を発揮するのはほとんどが Listeria monocytogenesのみ。無症状の健常保菌者も存在する。
通性嫌気性のG陽性短桿菌で、芽胞は形成しない。発育温度は0〜45℃と広く冷蔵室温でも発育し、食塩耐性も示すことから自然界に広く分布し、人畜共通感染症で、生野菜、生乳、チーズ、食肉などの食品が汚染されることもある。
細胞内寄生菌であり、細胞性免疫不全宿主に発症しやすい。
【臨床症状】
健常者では発熱を伴う下痢症を発症する程度。
細胞性免疫不全宿主や高齢者が感染すると髄膜炎、敗血症を発症することがあり、約10%に脳膿瘍を形成する。
妊婦では妊娠後期における発症が比較的多くみられる。
胎児敗血症性肉芽腫症は、母体からの垂直感染により胎児が敗血症を発症したもので、致死率が高い。出生した新生児は皮膚に膿痂疹様の発疹を認め、肝臓・脾臓をはじめとする全身の臓器に微小膿瘍や肉芽腫が形成されている。母体の症状は軽微であることが多い。
【診断】
・特異的な検査所見はない。髄膜炎の場合は細菌性髄膜炎の髄液所見を示す。
・診断は菌の培養同定やPCR法による。
【治療】
・第一選択はアンピシリン。相乗作用目的にしばしばゲンタマイシンが併用される。
・代替薬としてはST合剤、バンコマイシン、メロペネムなど
・髄膜炎の場合セフェム系は無効であり、50歳以上ではアンピシリンを併用する。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-10