ボツリヌス中毒

ボツリヌス中毒


【概念】
 ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素による中毒。

【病原菌】
 ボツリヌス菌 Clostridium botulinum, C. butyricum, C. baratiiは土壌、海水などの自然環境中に芽胞として生息し、産生する毒素の抗原性により、A〜Gの7型に分類される。
 体内に入ったボツリヌス毒素は神経筋接合部、自律神経節、神経節後の副交感神経末端からアセチルコリンの放出を抑制し、全身に末梢性の弛緩性麻痺を起こす。
 感染症法四類感染症。

【病型】
1)食餌性ボツリヌス症
 菌が嫌気的条件を満たした食品中で増殖し、毒素を含んだ食品を食べた人に毒素型食中毒を起こすもの。
2)乳児ボツリヌス症・成人腸管定着ボツリヌス症
 ハチミツなどの食品に含まれていた芽胞が、腸内細菌叢が不安定な乳児などで腸管内に定着し、産生された毒素によって神経麻痺を起こすもの。
3)創傷ボツリヌス症
 創傷部で菌の芽胞が発芽し、菌増殖に伴って産生された毒素によって発症するもの。

【臨床症状】
 潜伏期間5〜72時間(通常12〜24時間)
 顔から順に上肢、下肢へと弛緩性麻痺による症状が進行する。
 複視、眼瞼下垂、嚥下困難、口渇、便秘、脱力感、筋力低下、呼吸筋麻痺など
 重症例では呼吸困難により死亡することもある(致死率5〜10%)。
 食餌性ボツリヌス症では悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状が麻痺症状に先行する。
 乳児ボツリヌス症は乳児突然死症候群の一因と考えられている。

【治療・予防】
・一般に抗菌薬は無効。対症療法が中心で、全身管理が必要になる。
・食餌性ボツリヌス症では乾燥ボツリヌスウマ抗毒素が有効な場合もある。
・芽胞は熱や乾燥に強く、100℃の加熱に数時間は耐えるが、毒素は熱に不安定で80℃の加熱で不活化される。そのため食品の加熱調理により予防可能。
・乳児にハチミツなど芽胞汚染の可能性のある食品を与えない。


【註記】


【参考】


【作成】2017-06-10