エルシニア属菌感染症 Yersinia species infection
【概念】
腸内細菌科のグラム陰性桿菌であるエルシニア属菌で、ヒトに病原性を示すのはペスト菌 Yersinia pestisの他に、Y. enterocolitica、Y. pseudotuberculosisの2菌種がある。これらは食中毒の原因となり、腸炎やリンパ節炎を主体とする症状を引き起こす。
【疫学】
Y. enterocolitica、Y. pseudotuberculosisはブタ、イヌ、ウシなどの動物の腸管内に存在し、その便で汚染された水や食物を介して感染する。
低温でも増殖可能であり、ときに大規模な食中毒を引き起こす。
【臨床症状】
〈Y. enterocolitica感染症〉
潜伏期間は1〜10日
5歳未満の小児では腸炎を呈することが多く、それ以上の年齢層では腸間膜リンパ節炎や回腸末端の炎症症状を呈することが多い。
腸炎の場合は下痢、腹痛、発熱などがみられる。
腸間膜リンパ節炎や回腸末端の炎症では右下腹部痛や圧痛、発熱などがみられる。
症状は1〜3週間持続し、まれに菌血症になる。
感染後に反応性関節炎や結節性紅斑が出現することもある。
〈Y. pseudotuberculosis感染症〉
冬季に多く見られ、主に腸間膜リンパ節炎や回腸末端の炎症を呈するが、腸炎や菌血症がみられることもある。
猩紅熱様の皮疹や発熱を呈する泉熱の病原体とも考えられている。
【検査・診断】
・末梢白血球は軽度上昇
・腸炎症状がある場合は便からの菌分離
・ペア血清による抗体価の上昇
【治療】
・自然治癒傾向が強いため、対症療法が主。
・Y. enterocoliticaはβラクタマーゼを産生するため、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、ST合剤、ニューキノロン系を使用する。
・Y. pseudotuberculosisにはアンピシリン、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系を使用する。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-27