梅毒 syphilis
【概念】
Treponema pallidumによる慢性感染症で、STDのひとつ。
感染経路は性行為および垂直感染。近年、日本でも増加傾向にある。
【病原菌】
Treponema pallidumは光学顕微鏡では観察できない。培養もできない。
性行為中の微小な傷を通して感染する。
【臨床症状】
1)第1期梅毒 primary syphilis
梅毒感染後2〜6週。
硬性下疳を生じる。女性では子宮頸部に生じ、自覚症状が少ない。
通常3〜6週で治癒する。
2)第2期梅毒 secondary syphilis
硬性下疳出現後4〜10週。
発疹出現:左右対称の丘疹で、体幹、手掌および足底を含む四肢にみられる。
扁平コンジローマもみられる(約10%)。
発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状を伴う。
早期神経梅毒は第1期および第2期梅毒と併存する。無症状のこともあるが、髄膜炎、脳神経障害、眼症状、髄膜血管性梅毒、脳梗塞などを認めることもある。
3)潜伏梅毒
第2期梅毒は自然に改善し、無症状の潜伏梅毒に移行する。
早期潜伏梅毒:およそ感染後1年以内で、感染性がある。25%程度は第2期梅毒に戻る。
後期潜伏梅毒:およそ感染後1年以上経過すると感染性は消失する。
4)後期梅毒
未治療の潜伏梅毒患者の30%が後期梅毒に移行。通常罹患後数年〜数十年で生じる。
・皮膚や骨のゴム腫
・心血管梅毒(大動脈起始部の開大、大動脈弁閉鎖不全、冠動脈疾患)
・後期神経梅毒
【検査所見】
1)非トレポネーマ検査 rapid plasma regain (RPR)
カルジオリピン‐コレステロール‐レシチン抗原に対する抗体価を測定。疾患活動度と相関する。
2)特異的トレポネーマ検査:T. pallidum latex agglurination (TPLA)、fluoresent treponemal antibodies (FTA-abs)
疾患特異性が高く、抗体陽性は梅毒罹患を意味する。陽性反応は生涯持続するため、疾患活動度とは相関しない。
【診断】
RPRとTPLAの両者の結果から判定する。
【治療】
・第一選択:ベンジルペニシリンベンザチンあるいは経口合成ペニシリン薬の内服。
・第二選択:塩酸ミノサイクリン内服。
・神経梅毒:ベンジルペニシリン点滴静注。
・世界的にはベンザチンペニシリン筋注が標準だが、わが国では使用できない。
【註記】
【参考】
【作成】2017-08-09