大腸菌感染症

大腸菌感染症 Escherichika coli infection


【病原菌】
 大腸菌 Escherichia coliは腸内細菌叢を構成し、通常病原性を持たないが、一部は病原性を有して感染症を起こす。腸管感染症と、尿路感染症などの腸管外感染症に大別される。
 腸管感染症を起こす下痢原性大腸菌には以下の病原型があり、飲食物を介して経口感染する。
・腸管毒素原性大腸菌 enterotoxigenic E. coli (ETEC)
・腸管病原性大腸菌 enteropathogenic E. coli (EPEC)
・腸管出血性大腸菌 enterohemotthagic E. coli (EHEC)
・腸管侵入性大腸菌 enteroinvesive E. coli (EIEC)
・腸管凝集性大腸菌 enteroaggregative E. coli (EAEC)
 EHCE感染症は感染症法で三類感染症に指定。

 大腸菌は尿路や胆道感染症で最も多く分離される菌で、腹膜炎、蜂巣炎、新生児髄膜炎などの起炎菌にもなる。
 下痢原性大腸菌は、腸管上皮に付着・侵入して各種毒素を産生する。特にEHECはベロ毒素(志賀毒素)を産生して出血性腸炎を起こす。
 尿路病原性大腸菌は尿路上皮に付着して感染を起こす。

【臨床症状】
 下痢原性大腸菌は水様性下痢と腹痛をきたし、特にEHECとEIECは血便と激しい腹痛を起こす。
 尿路感染症では発熱や膀胱刺激症状を起こす。
 胆道感染症では発熱、腹痛、黄疸をきたし、腹膜炎では発熱や腹膜刺激症状を呈する。

【合併症】
 EHEC感染症では、有症者の5%に重篤な溶血性尿毒症症候群 hemolytic uremic syndrome (HUS)がみられる。血栓性微小血管障害が基本で、溶血性貧血、血小板減少と腎機能障害が3主徴となり、脳症もおこる。
 尿路感染症や胆道感染症では敗血症をきたしやすい。

【診断】
 各種検体からの菌の分離同定と血清型別で診断する。
 各種毒素を酵素抗体法で、毒素産生遺伝子をPCR法で確認する。

【治療】
 腸管感染症、特にEHCEでは感染早期のニューキノロン系やホスホマイシンが有効との見解があるが、抗菌薬によるHUS発症への影響を指摘する意見もある。
 腸管外感染症では第1〜2世代セフェム系抗菌薬を用い、重症例では第3世代セフェム系、アミノグリコシド系薬やカルバペネム系薬を用いる。


【註記】


【参考】


【作成】2017-06-14