インフルエンザ菌感染症
【病原菌】
インフルエンザ菌 Haemophilus influenzaeは、ヘモフィルス属の通性嫌気性G陰性桿菌である。
かつてインフルエンザの起炎菌と考えられ「インフルエンザ」の名称が付けられたが、実際はインフルエンザとは無関係。
ヘモフィルス属は発育に赤血球中に含まれるX因子(heamin)とV因子(NAD)を必要とする。
インフルエンザ菌は有莢膜株と無莢膜株に分かれ、有莢膜株はさらにa〜fの6つの血清型に分類される。一般に有莢膜株のほうが無莢膜株よりも病原性が強く、特にb株(Hib)は最も病原性が強い。
抗菌薬耐性は主にβラクタム系薬剤耐性であり、以下の3タイプがある。
・薬剤不活性化酵素であるβラクタマーゼ産生によるβラクタマーゼ産生アンピシリン耐性(BLPAR)
・ペニシリン結合蛋白(PBP)の変異が主体であるβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)
・βラクタマーゼを産生し、かつPBPに変異をきたしたβラクタマーゼ産生クラブラン酸アモキシシリン耐性(BLPACR)
日本では2000年代以降BLNAR、BLPACRが急増している。
侵襲性インフルエンザ菌感染症は感染症法の五類全数届出疾患。
【病態】
Hibを主体とする莢膜株は、5歳未満の小児に細菌性髄膜炎、急性喉頭蓋炎、化膿性関節炎、菌血症などの侵襲性感染症を引き起こす。上気道に定着した菌がウイルス性上気道炎などを契機として血液中に侵入し、菌血症から全身に分布し、侵襲性感染症を惹起する。
無莢膜株は小児の呼吸器感染症の主な原因菌であり、成人の市中肺炎や慢性閉塞性肺疾患の救済増悪の原因菌にもなりうる。無莢膜株は上皮細胞への付着因子を多く発現しており、気道上皮などに定着、侵入しやすい特徴があり、呼吸器感染症を惹起しやすい。
【検査】
・感染部位からの菌の分離・培養
・Hibについては、髄液などから迅速抗原診断が可能。
【治療・予防】
・BLPAR、BLNAR、BLPACR全てに感受性良好な薬剤選択が必要となる。
・セフトリアキソンとメロペネム、タゾバクタムとピペラシン、ニューキノロン系薬などが選択される。
・Hib髄膜炎では抗菌薬投与前にデキサメタゾンを併用することが難聴などの後遺症を軽減させる。
・経口的にはアモキシリンが推奨される。
・2008年12月よりHibワクチンが導入された。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-14