髄膜炎菌感染症 meningococcal infection
【病原菌】
髄膜炎菌 Neisseria meningitidisはG陰性双球菌で、流行性髄膜炎の起炎菌となる。
流行性髄膜炎はサハラ以南のアフリカで乾季に多く発生する。先進国でも局地的な流行が見られることもある。
少なくとも13の血清型があり、そのうち6種(A、B、C、W-13、X、Y)が侵襲性感染症を起こす。
血清群Aは最も発生頻度が高く、アフリカ、アジア、ロシア、中東にみられる。血清群Bの流行は通常先進国で見られ、血清群Cは世界中で主に年長小児から若年成人にかけて好発する。
感染症法では五類全数把握疾患。
【病態生理】
感染経路は接触感染または飛沫感染。
エンドトキシンである lipooligosaccharide (LOS)は宿主細胞への付着、侵入や補体殺菌に抵抗性を示し、敗血症例では血中LOS値が高値で髄液中濃度は低く、髄膜炎例では逆に髄液中で濃度が高く、血中は低値となる。
健常者の鼻咽腔における髄膜炎菌の保菌率が人口の20%を超えると、市中における流行感染の危険性が高くなる(わが国は1%未満)。
【臨床症状】
上気道への定着後、ときに粘膜を貫通し、髄膜腔や循環血中に侵入する。
平均潜伏期間は4日。
侵襲性感染症としては、菌血症(敗血症なし)、敗血症(髄膜炎なし)、髄膜炎、髄膜脳炎の4病型があり、急性劇症型には副腎出血や全身性ショックを伴う Waterhouse-Freidrichsen症候群がある。
非侵襲性感染症としては肺炎や尿道炎などがある。
先進国における血清型BまたはCによる侵襲性感染症は、髄膜炎(37〜50%)、敗血症(18〜33%)、劇症型敗血症(10〜18%)である。
臨床的特徴としては、眼球結膜、口腔粘膜、皮膚の点状出血があり、急性劇症型では出血斑が体幹や下肢の皮膚に認められる。これらの出血斑は血小板減少と相関し、DICの指標となる。
【検査所見】
・髄液または血液からの細菌分離
・髄液検査:好中球増多、蛋白増加、糖減少など
・ラテックス凝集反応:髄液中の抗原を検出
【治療・予防】
・ペニシリン系または第3世代セファロスポリン系薬の静注
・クロラムフェニコール(髄液移行性良好)の使用
・二次感染予防には、濃厚接触者に対する抗菌薬予防投与を行う。
対象者は患者発症前7日間における家庭内同居者、保育園での接触者、患者の口腔分泌物に直接暴露したものが含まれる。
予防投与にはリファンピシン、セフトリアキソン、シプロフロキサシンなどを使用する。
・2015年5月から四価髄膜炎菌ワクチンが国内で販売されている。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-14