進行性核上麻痺の臨床症状
主症状は核上性の眼球運動障害、仮性球麻痺、構音障害、体幹上部・項部のジストニア、痴呆である。
初発症状として、l-DOPA 無効の純粋無動akinesia を呈することが早期診断に役立つ。
・初期は歩行不安定(転倒しやすさ)、動作緩慢、発語障害、性格変化が現れる。
・中期には核上性眼球運動障害、項部ジストニア、知能障害、腱反射亢進が現れる。
・末期には全方向の眼球運動障害、体幹のジストニア、前頭葉症状が現れる。
大脳皮質の局所症状は通常みられない。
1)眼症状
本症の中核症状でありほぼ必発だが、出現はやや遅い。
核上性の垂直注視麻痺が特徴的だが、末期には全方向に運動制限が起こる。
頭位変換眼球反射 OCR は保たれる。
Bell 現象は初期には特徴的だが、末期には消失し、OCR も消失する。
自覚症状としても、視力低下、霧視、複視、乾燥感などを訴える。
2)姿勢・歩行異常
項部ジストニアは特徴的だが、必発ではない。
筋強剛は頚部・体幹に近いほど強く、頚部が後屈位を取る(nuchal dystonia)。
四肢では筋トーヌスはむしろ低下することが多い。
姿勢反射障害として、後方への転倒しやすさが特徴的。
歩行はアキネジアと姿勢反射障害のために障害され、すくみ足がみられる。
PKと異なり、小刻み歩行、前方突進、加速現象はまれ。不随意運動も少ない。
仮面様顔貌もみられるが、驚いたような、恐れおののいたような表情となる。
・仮性球麻痺は初期よりみられる。
・額の深い皺、瞬目減少、開口流涎も目立つ。
・錐体路徴候として腱反射の亢進、病的反射の出現が高率にみられる。
・自律神経症状はみられない。
3)認知症状
皮質下性認知症の形を取る。
・失念(想起に時間がかかる)
・思考の緩慢化
・無感情や抑うつなどの人格変化
・既に獲得した知識の利用障害
が共通症状とされ(Albert)、その本態は前頭葉症候群と考えられる。
4)精神症状
無感情、抑うつ、多幸、易刺激性、感情失禁、夜間譫妄など。
これらの精神知能障害は前頭葉症状と考えられている。
強制把握反射などの前頭葉兆候が見られることもある。
失語、失認、失行などの皮質性障害の特徴は示さない。
【註記】
【参考】
・湯浅龍彦:Annual Review 神経 1988
・望月秀樹、今井壽正:Modern Physician vol.14 1994
・美馬達哉、柴崎浩:神経内科:vol.43 no.1 1995
・森秀生、今井壽正:ibid
・長濱康弘、福山秀直:ibid
・丸山哲弘:Medical Practice vol.12 no.3 1995
・黒岩義之:Key-word 1996-97
【改訂】2017-02-01