流行性耳下腺炎 mumps

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)
epidemic parotitis, mumps


【概念】

 耳下腺が腫脹する伝染性疾患で、ムンプスウィルスによる。

【病原体】

 パラミクソウィルス科のムンプスウィルスmumps virus

【疫学】

・5類感染症、定点把握疾患(小児科定点)
・季節性:冬から初夏にかけて多い
・好発年齢:3〜6歳(幼児・学童)

【感染経路】

 ヒトからヒトへ飛沫感染と接触感染。
 発症2日前から症状出現後5日まで伝染性が強い。

【臨床症状】

・潜伏期:2〜3週(平均18日前後)
・初発症状:発熱と突然発症する片側または両側の耳下腺腫脹で発症し、48時間以上持続する。ときに顎下腺・舌下腺にも腫脹がみられる。
・耳下腺腫脹は75%が両側性で、軟らかく圧痛があり、開口時・咀嚼時に疼痛が強い。腫脹のピークは通常48時間以内。
・発熱期間は数日、耳下腺腫脹は約1〜2週間で消退する。
 合併症がなければ経過は良好で自然治癒する。
・感染後、終生免疫が獲得される。
 30〜35%は不顕性感染(低年齢ほど不顕性感染が多い)。

【合併症】

・無菌性髄膜炎(3〜10%):経過は短く、予後も良好。
・脳炎・難聴(多くは片側性):予後は不良。
・膵炎:嘔吐、上腹部痛で発症する 頻度は少ない。
・睾丸炎(成人男性の25%):多くは片側性で、睾丸の熱感・腫脹・疼痛がみられる 。
 数日で軽快し、不妊症を残すことはまれ。
・乳腺炎(30%)、卵巣炎(5%):思春期以降の女性に合併。
・妊娠初期に感染すると1/3が自然流産する。先天奇形の報告はない。

【診断】

・ウィルスの分離:唾液または髄液より。
・RT-PCR法によるウィルス遺伝子検出。
・ペア血清によるIgG抗体価の上昇、または急性期のIgM検出(EIA)。

【治療・予後】

・治療は対症療法のみ。
・耳下腺、顎下腺又は舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止(学校保健法第2種)。
・弱毒生ワクチンがあるが、まれに髄膜炎の副反応が報告されているため、現在は任意接種となっている。


【註記】


【参考】
・国立感染症研究所HP


【作成】2016-12-15