百日咳 pertussis
【病原菌】
百日咳菌 Bordetella pertussisは好気性のG陰性短桿菌。
体内に侵入した菌は線維状赤血球凝集素(FHA)、線毛、パータクチンなどを介して気道線毛上皮に定着する。その後百日咳毒素(PT)、アデニル酸シクラーゼ毒素、気管上皮細胞毒素などの毒素活性により気道上皮細胞を障害し、感染を成立させる。
日本では1981年より無細胞百日咳ワクチンを含む3種混合(DTP)ワクチンが導入され、患者数は激減した。しかし、2008年以降報告数が増加しており、なかでも成人例が増えている。
感染症法の五類感染症・定点把握疾患。
パラ百日咳菌 B. parapertussisは、同じボルデテラ属の細菌で、百日咳に類似した症状を呈する。
【臨床症状】
感染経路は飛沫感染。潜伏期間は7〜10日。
1)カタル期:軽度の上気道炎症状から始まる(1〜2週間)。
2)痙咳期:乾性咳嗽が出現し、さらに激しい発作性の咳に進展する。
しばしば特徴的な吸気性笛声(whoop)と、それに続く嘔吐を伴う。
チアノーゼ、無呼吸、顔面紅潮・眼瞼浮腫(百日咳顔貌)などもみられる。
3)回復期:その後2週間以上かけて症状は徐々に回復する。
【診断】
14日以上続く咳に、発作性の咳込み・吸気性笛声・咳き込み後の嘔吐のいずれかの症状を伴う場合、臨床的に診断する。
確定診断は培養法あるいは核酸増幅法(PCR法、LAMP法)での百日咳菌検出。
発症後4週以上経過している場合、血清診断を行う。EIA法によるPT-IgG抗体測定で、DPTワクチン未接種者では10EU/mL以上、ワクチン既接種者では94EU/mL以上、あるいはペア血清で2倍以上の上昇を陽性とする。
【治療・予防】
カタル期であれば抗菌薬投与により症状の軽症化が期待できる。
基本はマクロライド系抗菌薬で、エリスロマイシンやクラリスロマイシンを使用する。
百日咳特有の咳が出現してからは、治療効果は低くなる。
2012年よりDTPに不活化ポリオワクチンを加えた4種混合ワクチンが導入されている。
【註記】
【参考】
【作成】2017-06-14