国際政治

国際政治


【国家主権と国際政治】
 国際政治とは、国家と国家が織りなす政治である。
 国際政治を担い、活動する組織や個人を主体(アクター)と言うが、伝統的には国家のみがアクターである。
<国際政治の特徴>
・国家が主権を持つこと。
 国家主権とは、国家が領土内のあらゆる個人や集団に対して最高・絶対の支配権を持つとすること。
 他の国家に命令を下すことは、主権の侵害、内政干渉になる。
 このため、国際社会では国家の上にあって国家に命令を下すような権力は存在しない。
・国家間の対立の場合、それを処理する世界政府のような機関はない。

【国際政治の変質】
 主体の多様化:国会外の組織の影響力が増大。
<国際組織>
1)政府間国際組織
・国際連合
 総会、安全保障理事会、経済社会理事会、国際司法裁判所などの主要機関のほか、多くの下部組織を含む。
 武力行使を含む集団的制裁措置を認めている。
 多数決を原則として採用しながらも、安全保障理事会では5常任理事国に拒否権を認めている。
・欧州連合(EU)
 加盟国は国家としての権限をEUに委譲していき、ゆくゆくは「ヨーロッパ合衆国」のようなものをめざす、超国家的な統合機構である。
2)非政府間国際組織(NGO)
 国際理解や国際協力の推進など、多様な目的を持つ組織。
 国家的威信などの制約がないので、より柔軟な行動がとれる。

【国内政治と国際政治】
パワー・ポリティックス(権力政治)
 国際社会における各国の目標達成能力をパワー(権力)という。
 各主権国家がそれぞれパワーを行使して国益・国民的利益(ナショナル・インタレスト)を追求する状態。
 国際法の制約はあるが、国際社会では国家主権の絶対性が前提とされている。
国際社会の変化
 国際法を受け入れ、遵守する傾向。
 国際連合の意思を尊重する姿勢の広まり。
 軍事ブロックの形成。
リンケージ・ポリティックス(連携政治)(ローズノウ)
 国際政治と国内政治の区分が相対化し、国内問題が国際的に大きな影響を及ぼしたり、国際政治の問題が国内政治と連動するようなことが多くなった。

【国際社会と安全保障】
<安全保障の三類型>
 国家間に共通の規範を設けるために国際法が発展してきたが、国際法は違反した国や行為体に対する制裁力が弱く、国内法ほどの効力を持ちえていない。
1)個別的安全保障:各国独自の安全保障。
2)対抗的安全保障(勢力均衡):政策や利害を同じくする他国との攻守同盟。
 同盟関係を結ぶことで力のバランスをとり、仮想敵国に対抗する(バランス・オブ・パワー)。
 諸国家間に連合を形成し、しかもそれを柔軟に組み替えることで大国の出現を阻み、自国の独立と利益を確保し、国際法を遵守させ、国際平和の維持を図る政策。
3)集団的安全保障:国際連盟や国際連合など。

【集団的安全保障】
 対立関係にある国をも含め、関係諸国のすべてを集団安全保障の体制に参加させ、相互に武力によって攻撃をしないことを約束させる。違反に対しては関係国のすべてが共同で制裁を加える。
<国際連盟>
 初の集団安全保証機構
1)総会での議決は全会一致による。
2)制裁は経済制裁の勧告のみで、拘束力がなく、弱い。
3)アメリカの不参加、日・独・伊の脱退、ソ連の除名。
<国際連合>
1)多数決原理を導入。
2)安全保障理事会の機能を強化し、軍事的制裁も可能にした。
3)五大国の優位。ただし、拒否権のため、東西冷戦下で安保理の機能麻痺が起こった。
<地域的集団安全保障>
 全欧州安全保障協力機構(OSCE)など。
・勢力均衡との相違
 ワルシャワ条約機構や北大西洋条約機構は、実際は攻守同盟であり、対抗的安全保障である。
個別的自衛権:自国だけで防衛する権利。
集団的自衛権:NATOのような攻守同盟。

【東西問題と南北問題】
・東西対立:冷戦。自由民主主義対共産主義。資本主義対社会主義。→軍事ブロックの形成。
・多極化:東西両陣営の二極化から平和共存、緊張緩和をへて多極化傾向へ。
・南北問題:「北」の豊かな先進国と「南」の貧しい発展途上国の間に大きな経済格差。
国際政治の変容
・資源に恵まれた国と無資源国の対立→無資源国が最貧国に転落。
・東欧革命(1989)→冷戦の終結、地域紛争の増加。

【ゲームの理論】
 競争・紛争の状態にある場合の当事者の行動を数学的に研究する理論。
 不完全情報下で、複数の当事者が、自己の利益の最大化を図りながら行動するものとして分析する。


【参考】
・「はじめて学ぶ政治学」:加藤秀治郎著 実務教育出版 1994 東京