古文:名詞他

古典文法 Ⅳ:名詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞


Ⅰ 名詞
 名詞は、自立語で活用がなく、単独で主語になることができ、事物の名を表す単語。体言と名詞は同義語である。

① 普通名詞
 同じ種類の事物に共通する名を表す名詞。
② 固有名詞
 特定のひとつの事物に限って用いられる名詞。
③ 数詞
 事物の数量や順序を表す名詞。
 本数詞は数自体を指す部分で、助数詞は数を表すために添える語(接尾語)をいう。
④ 形式名詞
 普通名詞が名詞としての実質的な意味を失い、形式的に用いられる名詞で、常に連体修飾語とともに用いられる。
⑤ 代名詞
 人や事物の名を言わないで、それらを直接に指し示す名詞。
 人を指し示す人称代名詞と、事物・場所・方向を指し示す指示代名詞とがある。

・人称代名詞

自称(一人称) 対称(二人称) 他称(三人称) 不定称
あ、あれ
わ、われ
おのれ、それがし
な、なれ
なんぢ、きんぢ
いまし、おのれ
か、かれ
あ、あれ
そ、それ

た、たれ
なにがし

・指示代名詞

  近称 中称 遠称 不定称
事物 こ、これ そ、それ か、かれ
あ、あれ
いづれ
なに
場所 ここ そこ かしこ いづこ
いづく
方向 こち、こなた そち、そなた あち、あなた
かなた
いづち
いづかた

・再帰代名詞
 話し手が、話題の中の登場人物の立場に立って、登場人物自身のことを指すときに用いる代名詞(= 反射代名詞、反照代名詞)。

Ⅱ 連体詞
 連体詞は、自立語で活用がなく、単独で、すぐ下の体言を修飾する単語。数は少ない。
 <語例>
 ある、あらぬ、あらゆる、ありし、ありつる、いはゆる、かかる、きたる、させる、さる、去んぬる、去にし

Ⅲ 副詞
 副詞は、自立語で活用がなく、主として用言を修飾し、下に来る言葉の意味を詳しく説明したり、限定したりする。

① 状態の副詞
 主として動詞を修飾し、その状態を詳しく説明する。
 「かく」「さ」「しか」は、文中においては、それらの語の前に述べられている事柄を指し示す働きがあるため、指示の副詞とも呼ばれる。
② 程度の副詞
 修飾される語の性質の程度や、状態の程度を示す。
③ 陳述の副詞
 打ち消しや推量など、一定の言い方と呼応して用いられる。呼応の副詞、または叙述の副詞とも言う。「陳述」とは、ひとつの文としての形を整える作用のことをいう。
 ・打ち消し・打ち消し推量:(ず、じ、まじ、なし)などと呼応
 ・禁止:(そ、な)などと呼応
 ・推量:(む、けむ、らむ、べし)などと呼応
 ・疑問・反語:(や、か)などと呼応
 ・仮定:(ば、とも)などと呼応
 ・願望:(ばや、もが、命令形)などと呼応
 ・比喩:(ごとし)などと呼応
 ・適当・当然:(べし)などと呼応

Ⅳ 接続詞
 接続詞は、自立語で活用がなく、単独で前後の文節や文をつなぐ単語。

1)主として文頭に置かれ、条件を示して接続するもの
 ① 順接:前に述べた事柄に対し、後に順当な結果が現れる。
 ② 逆接:前に述べた事柄に対し、相反したり一致しなかったりする結果が現れる。
2)主として文中に置かれ、条件を示さずに接続するもの
 ① 並列:前に述べた事柄と同じ資格や内容を述べる。
 ② 添加:前に述べた事柄と別の内容を加える。
 ③ 選択:前に述べた事柄と後の事柄から選び出す。
3)その他の接続詞
 ① 話題を転換するもの
 ② 前の言葉を受けて何かを補足するもの

Ⅴ 感動詞
 感動詞は、自立語で活用がなく、主語・述語・修飾語にならず、常に独立語となり、自己の感動・相手への呼びかけやその応答などの意を表す単語。

① 感動を表すもの
② 呼びかけを表すもの
③ 応答を表すもの


【参考】
・中村幸弘、杉本完治共著「簡約古典文法」日験 1997