概念の種類
Ⅰ 概念構成の性質による分類
1)経験概念と純粋概念
経験概念 empirical conceptとは、経験から抽象によって作られた概念であり、純粋概念 pure concept (reiner Begriff)とは、経験に基づかないア・プリオリな概念である(カント)。
2)単独概念と一般概念
単独概念 individual conceptとは、外延にただ一つの成員しか含まない概念であり、一般概念 general conceptとは、意味を変えずに数多くの事物に共通しうる概念である。
単独概念はクラスの成員がひとつのみであり、一般概念はクラスの成員が複数ある。
3)単純概念と複合概念
単純概念 simple conceptとは、1個の概念を表すものであり、複合概念 complex conceptとは、数個の概念を同時に含んで表すものである。
単純概念は内包が分析不能であり、複合概念は内包が種々の性質に分析可能である。
4)個別概念と集合概念
個別概念 distributive conceptとは、それの内包する個体に同一の意義を以て適用しうる一般概念、または単数概念であり、集合概念 collective conceptとは、個物の集合を全体として指す概念である。
5)具体概念と抽象概念
具体概念 concrete conceptとは、具体的な形をそなえたものの概念であり、抽象概念 abstract conceptとは、具体的な個物ではなく、その個物には属しはするが、それから分離して考えられうる性質や関係を指す概念である。
Ⅱ 概念相互の関係による分類
1)同一概念と等価概念
同一概念 identical conceptとは、言語形式は異なるが、内包および外延が全く同じ概念である。
等価概念 equipollent conceptとは、観点の相違によって、内包は異なるが外延においては一致する概念である。例えば、「刀」と「武士の魂」など。
同一概念は内包もクラスも同じだが、等価概念では内包は異なるがクラスが同じになる。
2)上位概念と下位概念
ある概念が他の概念の外延を包摂するとき、前者を上位概念 superordinate concept、後者を下位概念 subordinate conceptという。
同一の類概念に属する種概念を、相互に同位概念 co-ordinate conceptという。
3)隣接(選言)概念と交叉概念
同一の類概念に属しながら、その範囲が異なる概念を離接(選言)概念 disjunctive conceptという。ある類に属する離接概念をことごとく列挙すると、その類概念の外延を覆いつくす。
外延の一部が共有されているが、同一概念でもなく、また離接概念でもないものを交叉概念 cross conceptという。
隣接概念はクラスに全く共通部分がないが、交叉概念ではクラスに共通部分がある。
4)相関(相対)概念 relative concept
一方が他方との関係を離れては意味を成さないようなものの間の関係を持つ概念。または、互いに他を予想し、その一方を欠くと無意味になるような概念。例えば、「右」と「左」。
5)矛盾概念 contradictory concept
一方を認めれば必ず他方を否定することになり、一方を否定すれば必ず他方を認めることになるような関係にある概念。中間的なものは認められない。
矛盾概念のうち、ある性質を肯定的に意味する方が積極(肯定)概念であり、それに対立する概念が消極(否定)概念である。
6)反対概念 contrary concept
ある同じ性質の両極端をあらわす2つの概念。
反対概念の間には中間的なものの存在が認められる。
両者をともに肯定することはできないが、ともに否定することはできる。
量的な相対的差別である。
7)乖離(離隔)概念 disparate concept
類と種の関係もなく、同一の類概念にも包摂できない2つの概念の相互関係。不等概念、または異類概念ともいう。