定義 definition
概念の内包を明らかにすることを<判明 distinct>にするといい、外延を明らかにすることを<明晰 clear>にするという。
概念の内包を判明にし、外延を明晰にする論理的手続きを<定義 definition>という。
定義とは、概念の内容を限定すること、すなわちある概念の内包を構成する本質的属性を明らかにし、他の概念から区別することである。その概念の属する最も近い類を挙げ、さらに種差を挙げて同類の他の概念から区別して命題化することである。
・被定義項 definiendum:定義される名辞
・定義項 definiens:定義に用いる語句
【定義における諸規則】
1)定義は、定義される概念の本質的属性を明示しなければならない。
定義は被定義項の公共的内包を与えるべきである。公共的内包とは、被定義項に属する諸対象の共通な性質であり、しかも任意の対象がそのクラスに属するか否かを判定するのに十分な基準である。
2)定義に用いる概念と、定義される概念との外延は一致しなければならない。
定義に用いる概念の外延が、定義される概念の外延よりも大きい場合を広定義、小さい場合を狭定義という。
・広定義:定義項>被定義項
・狭定義:定義項<被定義項
3)定義される概念を定義の中に含ませてはならない。
定義される概念が定義の中に含まれるものを循環定義という。
4)定義には曖昧な、多義的な、比喩的な言葉を用いてはならない。
5)定義は、肯定的な言葉で述べうるときには、否定的な言葉を用いてはならない。
【定義の種類】
1)直示的定義 ostensive definition(指示による定義)
概念の適用される対象を具体例で明示することによって、その概念の内包を理解させる方法。不十分な定義である。
定義される名辞が適用される対象を直接指示することで、被定義項のクラスの含む個体の名称を列挙することもあれば、被定義項のクラスの部分クラスを列挙することもある。
2)唯名的定義 nominal definition
単に別の語を言い換えるにすぎない定義の仕方。不十分な定義である。
同意語による定義 synonymous definitionは、難解な名辞をこれと同じ内包の平易な名辞で置き換えたり、外国語の名辞を母国語の同じ内包の名辞に翻訳する場合である。
新しい名辞を導入することにより、旧来の冗長な表現の簡潔化や、新しく発見された現象の命名に使用されることもある。
3)実質的定義 real definition(分析的定義 analytic definition)
定義される概念の指示する対象を分析し、それによってその本質的規定を行う方法。
*種と種差による定義 definitio per genus et differentiam
定義される概念の属する最近類概念の内包に、その項を他のものから区別する種差を加える方法で、実質的定義の一種である(アリストテレスによる)。
4)発生的定義 genetic definition(総合的定義 synthetic definition)
本質的属性の分析が困難な場合、対象の発生や成立の条件を挙げて定義する方法。
5)操作的定義 operational definition
概念の示す対象が、どのようにして実験・観察されうるか、その対象をどのようにして他のものから区別し、その特性を決めるかという操作を述べる定義。
6)顕現的定義 と含蓄的定義
顕現的定義 explicit definitionとは、被定義項と定義項とを分離して述べる型である。
含蓄的定義 implicit definition(文脈による定義 contextual definition)とは、被定義項と定義項が分離できない型であり、事物の関係や機能を表す。
【例】顕現的定義:(父)=def(男の親)
含蓄的定義:(xはyより硬い)=def(xはyを傷つけるが、yはxを傷つけない)
*「=def」は「定義により同意である」と読む。
顕現的定義では被定義項も定義項も名辞であるが、含蓄的定義では文章の形式を取り、定義される名辞はその文章の中で定義される。