古文:基礎

古典文法 Ⅰ:基礎


1. 文と文章

 文とは、基本的には主語と述語からなり、場合によってはその他の言葉も加わり、それだけである思想や感情を表す言葉のひとまとまりをいう。
 文章とは、いくつかの文がまとまり、全体としてある思想や感情を表現する書き言葉をいう。

2. 文節とその相互関係

 文節とは、文を意味や発音の上から不自然にならないように、できるだけ小さく区切った最小の単位をいう。

1)文節の相互関係には次の6つがある。
① 主語・述語の関係
 「ナニガ」(主語)と、「ドウスル・ドンナダ・ナンダ」(述語)の関係。
② 修飾語・被修飾語の関係
 他の文節の意味内容を説明する文節(修飾語)と、それを受ける文節(被修飾語)。
 修飾語には、体言を修飾する連体修飾語と、用言を修飾する連用修飾語とがある。
 体言とは、「実体を表す言葉」の意味で、名詞を指す。
 用言とは、「作用を表す言葉」の意味で、動詞、形容詞、形容動詞を指す。
③ 接続・被接続の関係
 理由や条件を示す文節と、それを受ける文節。
④ 対等(並立・並列)の関係
 二つ以上の文節が、対等の資格で並ぶ場合。
⑤ 補助・被補助の関係
 補助的な意味を添える文節(補助語)と、添えられる文節。
⑥ 独立の関係
 他の文節から独立し、感動・応答・呼びかけを表す語。

2)連文節とは、いくつかの文節がまとまってひとつの文節のような働きをしているものをいう。

3. 単語

 単語とは、言葉としての意味や働きを表す最小の単位をいう。
1)自立語と付属語
 自立語とは、その言葉だけで分節を作ることができ、それだけである意味を表している語をいう。
 付属語とは、その言葉だけでは文節を作ることができず、自立語についてはじめて文節を作ることができる語をいう。
2)活用
 活用とは、言葉の用い方による語形、特に語尾が変化することをいう。
3)品詞分類
 品詞とは、単語を一定の文法的性質を基準にして分類したもので、通常10種類の品詞に分けられる。

<基準>
① 自立語か付属語か
② 活用する語かしない語か
③ 主語・述語・修飾語などになれる語かなれない語か

<品詞>
単語
・自立語
  ・活用する語-述語となる語(用言)
    ・言い切りの語尾がウ段で終わる語・・・動詞
    ・言い切りの語尾が「し」で終わる語・・・形容詞
    ・言い切りの語尾が「なり」「たり」で終わる語・・・形容動詞
  ・活用しない語
    ・主語になる語(体言)・・・名詞
    ・修飾語となる語
      ・用言を修飾する語・・・副詞
      ・体言を修飾する語・・・連体詞
    ・接続語となる語・・・接続詞
    ・独立語となる語・・・感動詞
・付属語
  ・活用する語・・・助動詞
  ・活用しない語・・・助詞

4. 文と文章

1)文の種類
A 構造上からの分類
① 単文:ひとつの文の中に、主語・述語の関係が一回だけ現れる文。
② 重文:ひとつの文の中に、主語・述語の関係が対等に二回以上現れる文。
③ 複文:ひとつの文の中に主語・述語の関係があり、それが連文節としてさらに主語・述語の関係が別に成り立っている文。

B 意味上からの分類
① 平叙文:断定・推量・意思などを述べる文。一般に活用後の終止形で終わる。「は」「も」以外の係助詞が使用されている場合には、文末の活用語は連体形または已然形となる。
② 疑問文:疑問または反語を意味する文。疑問の語や、係助詞「や・か」が文中・文末に用いられる。係助詞「や・か」が文中にある場合、または疑問語が文頭・文中にある場合には、文末の活用語は連体形となる。
③ 命令文:命令・禁止などの意を表す文。活用語の命令形や、禁止・希望などの意を表す助詞で文が終わる。
④ 感動文:感動の意を表す文。文末に感動を表す助詞が使われることが多い。連体形で文を言い切ることも多い。文頭に感動詞を置くことも多い。

2)文の形態
① 地の文:会話文・心内文を除いた、それ以外の文。
② 会話文:会話の内容を記した文。普通、引用符を付けて表現する。
③ 心内文:心のなかで思ったこと、考えたことを述べた文。

3)文章と段落
 段落とは、ひとつの文章の中で、意味内容の上でまとまりのある、ひとつの文の区切りをいう。
 文や段落の相互関係の分類には次のものがある。
① 順接型:前文に原因・理由が述べられ、後文にその順当な結果が述べられるもの。
② 逆接型:前文と後文が、反対・矛盾する関係にあるもの。
③ 添加・並立型:前文の内容に、後文で別の事柄が付け加えられたりするもの。
④ 説明・補足型:前文の内容を、後文で説明・補足するもの。
⑤ 選択型:前文と後文を対比・比較し、ひとつを選択させるもの。
⑥ 話題転換型:前文から後文へ、話題を変えるもの。

4)さまざまな構造の文
① 倒置文:文を構成するある部分が、普通の形とは違った順序で並べられている文。
② 省略文:普通の文の形なら当然あるはずの、文を構成するある部分が省略されている文。
③ 挿入文:文の途中に、話し手の感想や解説などを入れてある文。


【参考】
・中村幸弘、杉本完治共著「簡約古典文法」日験 1997