古典文法Ⅵ:助詞
1. 助詞
助詞とは、付属語で活用がなく、主に活用語・体言・その他の助詞などに付いて、その語と他の語との関係を示したり、その語にいろいろな意味を添えたりする語である。
2. 助詞の働きと分類
・関係を示す
・体言や連体形などに付いて、その語と下の語との関係を示す…格助詞
・活用語に付いて、上の語を下に続ける働きをする…接続助詞
・意味を添える
・種々の語に付いて
・文末の活用語に一定の言い方を要求する…係助詞
・下の語を修飾し副詞のような働きをする…副助詞
・文末に付き、詠嘆・願望・禁止などの意を表す…終助詞
・文節の終わりに付き、感動・詠嘆の意を表す…間投助詞
格助詞 | の、が、に、を、へ、と、より、から、にて、して |
接続助詞 | ば、とも、ど、ども、が、に、を、て、して、で、 つつ、ながら、ものの、ものから、ものを |
副助詞 | だに、すら、さへ、のみ、ばかり、など、まで、し |
係助詞 | は、も、ぞ、なむ、こそ、や、か |
終助詞 | な、そ、なむ、ばや、てしが、てしがな、にしが、にしがな もがな、かな、な、は、も、かし、ぞ |
間投助詞 | や、よ、を |
3. 格助詞
名詞・代名詞・活用語の連体形などに付いて、その語が下の語に対して、どのような資格を持つかを示す助詞。
格とは、名詞・代名詞が文中の他の語に対して持つ資格のことである。
【の、が】
① 主格を示す。
② 連体修飾格を示す。
③ 同格を示す。
④ 体言の代用をする(準体助詞)。
⑤ 比喩を示す。
【に】
連用修飾格を示す。
① 時間・場所を示す。
② 動作の対象を示す。
③ 動作の目的を示す。
④ 変化の結果を示す。
⑤ 移動の帰結点を示す。
⑥ 動作の原因・理由を示す。
⑦ 受身・使役の対象を示す。
⑧ 比較の基準を示す。
【を】
連用修飾格を示す。
① 動作の対象を示す。
② 経過する場所を示す。
③ 動作の起点を示す。
【へ】
連用修飾格を示す。
① 動作の方向を示す。
【と】
連用修飾格を示す。
① 動作を共にする相手を示す。
② 変化の結果を示す。
③ 引用を示す。
④ 並列を示す。
⑤ 比較の基準を示す。
⑥ 比喩を示す。
【より】
連用修飾格を示す。
① 動作の起点を示す。
② 経過する場所を示す。
③ 手段・方法を示す。
④ 比較の基準を示す。
【から】
連用修飾格を示す。
① 動作の起点を示す。
② 経過する場所を示す。
③ 動作の原因・理由を示す。
【にて】
連用修飾格を示す。
① 時間・場所を示す。
② 手段・方法・材料を示す。
③ 動作の原因・理由を示す。
【して】
連用修飾格を示す。
① 手段・方法を示す。
② 使役の対象を示す。
③ 動作を共にする相手を示す。
4. 接続助詞
活用語に付いて、前の文節を後の文節に続けていく働きをする助詞。
・一定の条件のもとに接続するもの
・仮定条件
・順接:ば、は
・逆接:とも
・確定条件
・順接:ば、に、を、て
・逆接:ど、ども、が、に、を、て、ながら、ものの、ものから、ものを
・条件を持たず、単純に接続するもの:て、して、で、つつ、ながら、が、に、を
【ば、は】
① 活用語の未然形に付いて、順接の仮定条件を示す。形容詞の未然形、もしくは打ち消しの助動詞「ず」の未然形に付くときは、「ば」が「は」となる。
② 活用語の已然形に付いて、順接の確定条件を示す。
a 原因・理由を示す。
b 偶然的条件を示す。
c 恒常的条件を示す。
【とも】
活用語の終止形(形容詞・形容詞型活用語・打ち消しの助動詞「ず」には未然形)に付いて、逆接の仮定条件を示す。
【ど、ども】
活用語の已然形に付いて
① 逆接の確定条件を示す。
② 逆接の恒常的条件を示す。
【が】
活用語の連体形に付いて
① 逆接の確定条件を示す。
② 単純な接続を示す。
【に、を】
活用語の連体形に付いて
① 逆接の確定条件を示す。
② 順接の確定条件を示す。
③ 単純な接続を示す。
【て】
活用語の連用形に付いて
① 単純な接続を示す。
② 原因・理由を示す。
③ 逆接の確定条件を示す。
④ 補助動詞が下接する。
【して】
活用語の連用形に付いて、単純な接続を示す。
【で】
活用語の未然形に付いて、打ち消しの接続を示す。
【つつ】
活用語の連用形に付いて
① 動作の反復・継続を示す。
② 二つの動作の並行を示す。
【ながら】
動詞・助動詞の連用形、形容詞の語幹や体言・副詞に付いて
① 逆接の確定条件を示す。
② 二つの動作の並行を示す。
【ものの、ものから、ものを】
活用語の連体形に付いて、逆接の確定条件を示す。
5. 副助詞
いろいろな語に付き、それらの語にある意味を添えて、副詞のように下の用言を修飾する助詞。
【だに】
体言、活用語の連体形、助詞などに付いて
① 程度の軽いものを挙げて、それより重いものを類推させる。
② 最小限の限定を示す。
【すら】
体言、活用語の連体形、助詞などに付き、一つのものを挙げて、他にあるものを類推させる。
【さへ】
体言、活用語の連体形、助詞などに付き、ある状態に、さらいある事柄を添加する意を示す。
【のみ】
体言、活用語の連用形・連体形、助詞などに付いて
① それだけと限定する意を示す。
② 取り立てて強調する意を示す。
【ばかり】
体言、活用語の連用形・連体形、助詞などに付いて
① それだけと限定する意を示す。
② おおよその程度・範囲を示す。
【など】
① 例示して、他にも類似のものがあることを示す。
② 言い方を婉曲にする。
③ 引用を示す。
【まで】
体言、活用語の連体形に付いて
① 事柄の及ぶ範囲・限度を示す。
② 物事や動作の程度を示す。
【し】
いろいろな語に付いて、上の語を強調する。
6. 係助詞
いろいろな語に付いて、それらの語にある意味を添えたり、下の活用語の言い方を限定したりする助詞。
【は】
ある事柄を取り出して提示し、強調する。
【も】
① 並列・列挙、または添加を示す。
② 上の事柄が他のものと同趣であることを示す。
③ 感動を込めた強調を示す。
【ぞ、なむ(なん)、こそ】
強調を示す。「ぞ」「なむ」を受ける文末は連体形で結ばれ、「こそ」を受ける文末は已然形で結ばれる。
【や、か】
疑問や反語を示す。「や」「か」を受ける文末は連体形で結ばれる。
① 疑問を示す。
② 反語を示す。
【やは、かは】
「や」「か」に「は」が付いて「やは」「かは」となった場合は、主として反語を示し、これらを受ける文末は連体形で結ばれる。
7. 係り結びの法則
係助詞「ぞ」「なむ」「や(やは)」「か(かは)」が文中にある場合は、その文末は連体形で結ばれ、係助詞「こそ」が文中にある場合は、文末は已然形で結ばれる。
・ぞ(強調) → 連体形
・なむ(強調) → 連体形
・や、やは(疑問または反語) → 連体形
・か、かは(疑問または反語) → 連体形
・こそ(強調) → 已然形
1) 結びの省略
係り結びにおいて、結びの語が省略されることがある。
2) 結びの消滅(結びの消去、結びの流れ)
係助詞を受ける活用語で文が終止せず、そのまま下に続くときには、結びが消滅する。
3) 疑問語に対する結び
疑問・反語を表す副詞(たれ、など、なに、いかが、いかで、などの語)があると、それを受ける語の活用形は、係助詞が使われていなくても連体形となる。
4) 「こそ…已然形、…。」の用法
「こそ…已然形」で文が終わらず、そのまま下に続いていくときは、逆接となる。
8. 終助詞
文の終わりにあって、禁止・願望・詠嘆・強調などの意を添える助詞。
【な】
動詞型活用語の終止形(ラ変型の語には連体形)に付いて、禁止の意を示す。
【そ】
副詞「な」とともに用いられ、中間に動詞の連用形(カ変・サ変は未然形)をはさんで、「な…そ」の形で禁止の意を示す。
【なむ】
動詞型活用語の未然形に付いて、他に対する願望(あつらえ)を示す。
【ばや】
動詞型活用語の未然形に付いて、自己の願望を示す。
【てしが、てしがな、にしが、にしがな】
動詞型活用語の連用形に付いて、自己の願望を示す。
【もが、もがな、がな】
体言その他、いろいろな語に付いて、自己の願望を示す。
【か、かな、かも】
体言や活用語の連体形に付いて、詠嘆を示す。
【な】
体言や文末に付いて、詠嘆を示す。
【は、も】
文末に付いて、詠嘆を示す。
【かし、ぞ】
文末に付いて、念を押したり、断定したりする。
9. 間投助詞
文中や文末に用いられ、詠嘆・感動の気持ちを表したり、語調を整えたり、強調の意を示したりする助詞。
【や】
いろいろな語に付いて、詠嘆を示したり、語調を整えたりする。
【よ】
いろいろな語に付いて、詠嘆を示したり、呼びかけに用いたりする。
【を】
いろいろな語に付いて、詠嘆を示したり、語調を整えたりする。
10. 奈良時代特有の助詞
【ゆ、ゆり、よ】
格助詞。連用修飾格を表し、動作の起点や経由地を示す。「より」に同じ。
【な、に、ね】
終助詞。活用語の未然形に付き、「な」は自己の願望を、「に、ね」は他に対してあつらえ望む意を示す。
【こそ】
終助詞。動詞の連用形に付き、他に対してあつらえ望む意を示す。
【参考】