古典文法Ⅲ:用言2:形容詞・形容動詞
Ⅰ 形容詞
形容詞とは、事物の性質や状態を表す単語である。用言の一種で、述語になることができ、終止形が「し」で終わる。
1. 活用形
形容詞の活用にはク活用とシク活用の2種類があり、活用形には命令形もある。
1)ク活用
基本形 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
なし | な | く から |
く かり |
し | き かる |
けれ | かれ |
2)シク活用
基本形 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
楽し | 楽 | しく しから |
しく しかり |
し | しき しかる |
しけれ | しかれ |
*カリ活用
活用表下段の活用をいう。これは連用形「く・しく」に補助動詞の「あり」が結合してできたものであり、主として助動詞に連なるときに用いられる。
2. 形容詞の音便
① イ音便
連体形の語尾「き」「しき」が、「い」「しい」になることがある。
② ウ音便
連用形の語尾「く」「しく」が、「う」「しう」になることがある。
③ 撥音便
カリ活用の連体形の語尾「かる」「しかる」が、「かん」「しかん」になることがある。
3. 形容詞の語幹の用法
形容詞の語幹はク活用の語幹と、シク活用の終止形をいう。
① 語幹が名詞として用いられる。また、語幹に接尾語「み・さ・め」が付いて名詞となる。
② 語幹だけで、あるいは助詞「や」が付いて、感動の気持ちを表す。
③ 助詞「の」が付いて連体修飾語になる。
④ 接尾語「み」が付いて、原因・理由を表す。
Ⅱ 形容動詞
形容動詞とは、物事の性質や状態を表す単語である。用言の一種で、述語になることができ、終止形が「なり」または「たり」で終わる。
1. 活用形
形容動詞の活用にはナリ活用とタリ活用の2種類があり、活用形には命令形もある。
1)ナリ活用
基本形 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
静かなり | 静か | なら | なり に |
なり | なり | なれ | なれ |
*ナリ活用は連用形「〜に」に補助動詞の「あり」が連なったものであり、活用の仕方はラ変型である。
2)タリ活用
基本形 | 語幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
堂々たり | 堂々 | たら | たり と |
たり | たる | たれ | たれ |
*タリ活用は連用形「〜と」に補助動詞の「あり」が連なったもので、元々漢文訓読から発生したので、その語幹はすべて漢語である。
2. 形容動詞の音便
ナリ活用の連体形語尾「なる」に、助動詞「なり」や「めり」が付くと、「なる」が「なん」となることがある。タリ活用には音便はない。
3. 形容動詞の語幹の用法
① 語尾に接尾語「さ」が付いて、名詞となる。
② 語幹だけで、あるいは助詞「や」が付いて、感動の気持ちを表す。
③ 語幹に助詞「の」が付いて、連体修飾語となる。
【参考】
・中村幸弘、杉本完治共著「簡約古典文法」日験 1997