政党と政党制

政党と政党制


【政党成立の条件】
1)議会の独立性:議会が単なる諮問機関ではなく、独立の最高決定機関であること。
2)代表委任の確立:議員が国民の代表として独自の意思で行動する権限(代表委任)を持つこと。
3)多数決原理の確立

【政党の機能】
1)利益表出機能:社会問題を政治問題に転換していく機能。
2)利益集約機能:社会からの諸要求を調整し、政策提案にまとめ上げる機能。
3)その他:政治指導者のリクルート(補充)機能、政治教育・政治的社会化の機能など。

【政党の存立要件】
1)綱領・政策
 めざす基本的諸目標をまとめたものを綱領という。
 厳格な綱領を持つ政党を「世界観政党(イデオロギー政党)」と呼ぶ。
<政策面から見た政党の類型分類(ローウェル)>
 現状に満足か不満か、改革に楽観的か悲観的かを軸にして政党を4つに分類する。
・自由主義勢力は、現状にほぼ満足しながら、改革すればもっとよくなると考える立場である。
・保守勢力は、現状に満足しており、改革に対して懐疑的・消極的立場である。
・急進勢力は、現状に強い不満を持ち、革命などの変革で社会をよくできると考える立場である。
・反動勢力は、現状に強い不満を持ちながらも、これといった改革・革命の図式を示さない立場である。
 現状満足的な保守・自由勢力が強いとき、政治は安定しやすい。
 逆に、急進・反動勢力が強いときは、政治は不安定になりやすい。
 自由・急進勢力が強いときは、社会全体が進歩的になり、保守・反動勢力が強いとその逆になる。
2)組織
 制限選挙の時代:議員と地域の有力者からなる名望家政党(幹部政党)。
 普通選挙の時代:一般大衆が党員となる大衆政党(人民投票型民主主義の産物とされる)。
3)支持層
<社会主義政党の2つの戦略>
 マルクス主義は、労働者階級という特定階級から強固な支持を得ようとする(階級政党)。
 民主的社会主義は、広く国民各層から支持を集めようとする(国民政党)。
 実際に国民各層から幅広く支持を獲得するのに成功した政党を、包括政党catch all partyという。

【政党制】
<デュヴェルジェの分類>
 (1)一党制
 (2)二大政党制
 (3)多党制

<サルトーリの分類>
 1)政党間に競合のない、非競合的政党制
  (1)一党制:一党しかなく、それが支配しているもの。
  (2)ヘゲモニー政党制:形式的には複数の政党が存在しているが、実際には一党が支配しているもの。
 2)政党間に競合がある、競合的政党制
  (1)一党優位性:複数の政党が存在するが、一つの政党が他を圧倒しているもの。
  (2)二大政党制:二つの大政党が中心をなすもの。
  (3)穏健な多党制:政党数が3〜5で、イデオロギーの相違が大きくないもの。
  (4)分極的多党制:政党数が多く、イデオロギーの相違も大きい。連立政権は不安定になる。
  (5)原子的状況:無数の政党が乱立し、イデオロギーの相違も大きいもの。

【イギリスの政党制】
 名誉革命(1688)のとき、保守党の前身であるトーリー党と、自由党の前身であるホイッグ党が誕生。
 保守党は貴族、地主階層によって支持され、自由党は都市の商工業者によって支持された。
 両党による二大政党制は19世紀まで続いた。
 1900年に労働運動の盛り上がりから、労働党の前身組織が生まれた。
 第1時世界大戦中、自由党は内部分裂などで後退し、保守党と労働党の二大政党制になった。
 第2時世界大戦後、保守党と労働党との間で何度も政権交代があった。
 1980年代には左傾化した労働党が支持率を低下させ、労働党から分裂した社会民主党と自由党の連合(自由民主党)が票をのばし、その結果保守党の勢力が増大した(サッチャー首相)。
 1997年の総選挙では、穏健化して支持率を盛り返した労働党が政権についた(ブレア首相)。
 2001年の総選挙では、労働党政権が再選された。

【その他の主要諸国の政党制】
 アメリカ:民主党と共和党の二大政党制だが、政党間の差異はあまりはっきりしない。
 ドイツ:戦後は穏健な多党制で、連立政権は不安定ではない。
 フランス:分極的多党制から共産党が後退し、穏健な多党制へ移行しつつある。
 イタリア:典型的な分極的多党制で、連立政権も不安定である。

【政党制と連立政権】
連立政権
 連立(コアリション)とは、異なる党派がある目的のために一時的に協力関係を結び、統一行動をとること。
 一般に連立政権は不安定であるという考えが根強いが、ドットによれば、これは「神話」にすぎないという。
政権の規模と安定性
 過半数に満たない過小規模内閣は当然不安定である。
 過半数確保に不必要な政党を含まない、必要最小規模内閣(最小勝利内閣)は比較的安定である。
 過半数確保に不必要な政党も含む、過大規模内閣は不安定な傾向がある。
その他の要因
 連立に加わる政党が少ないほど安定する、与党間の政策上の相違が小さいほど安定する、など。


【参考】
・「はじめて学ぶ政治学」:加藤秀治郎著 実務教育出版 1994 東京